点々

思い出とか過去とか、自分という存在は生まれてから歩んできたものに根付いていると思っていたからずっと強い執着があったのだけれど、いつか死ぬし消えるのは避けられないと実感してからかなり薄れてきた。長らくおれはおれになるために生きていると思っていた。だから生まれたその瞬間から自分の選んできたことや手にしてきたものを忘れないよう執着してきたが、今はおれはおれでしか居られないこと、おれはおれのままで生きていくしかないことへの焦りの方が強い。おれはどうしたって存在している。あんなに自分が風に吹かれて飛んで消えてしまいそうだったのに、今はここに居る身体と心が重たくて仕方がない。いいこともある。おれにしか与えられないものもきっとあると思う。だっておれはおれでしか居られないのだから。いつ死んでも一緒、これは良い悪いではなく事実。