N30

「19才になったら死ぬと思う」って言ってた幼馴染が今日で30周年。その言葉が本当だろうと信じられるくらいには儚く揺れていたのに今やスクスクと健康に暮らしているみたいだ。もう数年以上も会っていないがおれはそれが嬉しい。

あの頃、はやく人間になりたいねって言い合ってたけどおれたちは人間になれたんだろうか。なれたんだろうな。でもおれは本当は人間に憧れてもいたし、人間になってしまうことをずっと恐れてもいた。でも普通になりたくないって思う方がよっぽど幅が狭かったし、普通も何も人間社会で自分の思うように生きようとしていくことの方がよっぽどオリジナリティあった。おれはおれになっていく。その結果、人間らしいことがあってもそれは普通とかそういう物差しの話ではない。人生は劇的だ!ありふれたことも沢山あるけど、それでも、劇的だ。

世界は変わっていく。だがおれも変わっていく。取り残されるとか置いていかれるとかそういう話ではない。どちらも両立する話だからだ。君とはもう出会えないけど、はじめましてするみたいにまた会うことは出来るだろうか。あなたが生きているというだけで、世界の一部をあなたが担っているというだけで、おれの人生も報われるような気がするよ。大袈裟かもしれないけど、この程度の話でもある。おめでとう。祈りのように。