錆び

溶け合う身体と世界の輪郭線、なのに自意識だけははっきりと知覚している。実存主義者の凱旋、ロマンチストの歌声、夜が鳴いている、闇が凪いでいる。瞬間と永遠は比較されるものではなく、同時に存在している。うなりをあげてかなしみがやってくる。残り火を置いて光が去っていく。与えられたぬくもりより、あなたを愛したい。運命を信じている。会うべき人には会ってきたつもりだ。生きるのも死ぬのもおんなじだ、それは諦めの言葉ではない。ぼくらが二度と透明を手に入れられなくても、あの夜を忘れることはできない。爬虫類になった手と、3分間の永遠と、しんしんと降る雪の中、撃ち込まれた銃弾を。あの街で息をしていたのは、息ができていたのは。今は油の切れた機械の身体が、相も変わらず夜更かしをしている。