言葉を取り戻さなきゃならない、ぼくの心から発せられる日本語ではない日本語、色と味と感触を言の葉に乗せに見える形にする、心に近い言葉とぼくはいつそれを呼んでいただろう。透明になる瞬間と言い換えてもいい。論理的だなんだという文脈からは遠く離れ、それでも一定の規範に沿って動く感情の大蛇。人は生きている。人は生きていく。人は、ではない、ぼくが、だ。音楽。音楽を取り戻そう。ぼくが生きた日々を取り戻そう。君が笑って生きる意味が汚れた、この言葉が浮かんだ時、音楽を出来ていると思えた。それはもう5年も前の話。海へ潜る。息をするように息を止め、誰もいない深海へ赴く。君のことは好きだけど、そんなに好き過ぎない。ああ、肉体が、魂が、すっかり癒着してしまった。ずっと剥がれかけでいたかった、それが贖罪になるような気さえしていたから。そんなことはないってもう知っているから。あとは身体検査です、息を止めて、めいっぱい大切なフリをして、踊り明かす。
春の死体
眠すぎて毎日吐き気と一緒に暮らしてる、風はぬるすぎて春を飛び越して 夏の匂いさえよぎるよ。
晴れの日には雨を求め、雨の日には晴れを求め、満たない器を抱えたぼくのカルマは二酸化炭素になって青に溶ける。感傷の残響、感動、ノー残業 今日。
時の流れさえ見える気がする、日々が遅すぎて。
遠くにあるのに忘れないから近い気がするんだ、近くにあるのに触れないから熱が出たりするんだ。
一生知れないもの、君の爪の味、人を殺す時の感触、ぼくが死んだ後の世界。あってもなくてもいいもの、だれかが決めたこと。なにかの始まりとなにかの終わり。
ぼくしか知れないもの、発しなかった言葉、作らなかった歌、あの日の君の輪郭。あってもなくてもいいもの、ぼくだけ決めたこと。世界に1つだけしかない夜。
余計なものは全部余計なまま、全部をないまぜにして、始まりと別れの季節に呑まれる。
ミッドナイト
夜はなんにもなくたってカナシミが寄り添ってくることがあるけど、それで自分は自分なんだと思って安心することもある。友達が「可哀想って思われるのがどうしようもなく嫌だ」と言っているのを聞いて、自分はどうだったろうと思い出した。ぼくは可哀想だと思って欲しかった。こんなにマトモじゃないのに、ちゃんと学校に行けて、ちゃんと卒業して、ちゃんと就職して、友達も居て趣味もあって生活が出来ていて。誰か可哀想だって知ってよ。どうしようもなく染み付いて取れない悲しみとか、剥がれない暗黒とか、流れ込んでくる夜とか、生臭い醜さを抱えて生きていくしかないことを、その絶望を、誰か知っていてよ。そう思って生きていた。「病名でもついたらいじめられないし、もう少しは楽なのかな」andymoriが歌うそんな詞に、2cmくらい救われたりした。むかし付き合っていた女の子は「可哀想だと言われたら、自分がいま可哀想なんだと知ってしまうから、言わないでいて欲しい」と言っていた。色んな人がいるなあ。色んな人がいるねえ。
澱みを負う
人間が持っているもの、目、鼻、口。耳に皮膚。感覚器。光は目で見るし匂いは鼻で感じるし味は口で味わうし、耳であなたの声を聞いて肌で体温をおぼえる。それだけだろうか。おれは魂の匂いを知っている。緑色の夜を知っているし、黒く震える声を知っている。かつて不幸になりたかった。幸せになってはいけないと思っていた。もっと言うと、幸せになるためには、まず一生分の不幸を背負わないといけないと思っていた。だから一緒に不幸になってくれる人をずっと探していた。厨二病の代名詞のような話だけれど、本当に本当に、そうとしか言えないくらい、そういう人を探し求めていた。「誰かを傷つけた分は、誰かを救うしかないよ」その言葉は柔らかかったけれど、決して甘くはなかった。いま、誰かを救えてるだろうか。もう4年も経つのか、あの夜から。「出来るだけ苦しんで死んで欲しい」と言われたことがある。とてもよくわかったし、死んであげられないことが申し訳なかった。だっておれが死んだら死んだで、その人は苦しんだろうから。死に等しい枯渇を長らく味わった。あなたの言う通りの結果になったし、復讐はもう充分遂げられていると思うから、安心して欲しい。あなたが忘れても、おれは一生忘れないだろうし。
誰かのために生きる、ということについて考える。そのためには自分が自分になることが必要だと知った。絶対にもっと優しくなる。復讐ではなく、敵のあなたの呪いの残滓も引き受けるために。おれは優しくなる。どんなに失敗を繰り返しても、その気持ちは剥がれないだろうと思う。
3月のそういう空気
昨日行ったライブが凄く楽しかった。Utaeさんと神様クラブとCity your cityを観たんだけど音楽が鳴ってる間ずっと踊りが止まなかった。おかげで足腰がペキペキになってる。出演者とお客さん合わせて半分以上くらいがなんか偶然知り合いで、音楽も最高だったんだけど、東京来てからこんなに沢山の人と出会ったんだなぁと思ったら果てしなくなってしまった。なんかあんまり生活がうまく行ってないなと思うんだけど、振り返ったらなんだか思ったより道ができていた。未来は恐ろしいし不安だし、進めてる気がしなくたって、いつだって振り返ると残ったものがあるのだと思うと少しだけ安心した。少しづつ最高になろうと思って、最高の人達とたくさん出会っている。自分だけがつまんないまんまじゃ申し訳ないから、何か頑張りたいなって思えるのはけっこう良い人間関係なんじゃないかと思う。みんなやさしい。すごく良い。
楽しかったなあ。
帰りは長谷川白紙くんとゆめのちゃんと3人で帰った。ゆめのちゃんが去ってから白紙くんと2人だったんだけど、2人になった途端になんか普通に照れて顔が見れなかった。感じ悪いと思われてなきゃいいな。
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先週の木曜日には、川本真琴のライブを観た。
川本真琴はるろうに剣心のオープニングだけ知ってて、父の友達がくれたカセットテープに入っていたそれを何回か聴いていた。音楽をちゃんと聴き始めた高校生の時にTSUTAYAでファーストアルバムをそんなに期待せずに借りて、一曲目から、良いんじゃないか???って思ってたらそのままアルバムの最後の曲まで全部良い曲で終わって、静かな衝撃だった。岡村靖幸がプロデュースしたということで発売当時は話題だったようだけど、そのとき岡村靖幸の事あんまり知らなくて、2曲目の「愛の才能」の後ろで「ベイベベイベ」うるさい人が岡村靖幸なのか〜って印象しかなかった。
タイムマシーンという曲が好き。「タイムマシーンがいつか出来たらもう1ッコのふたりに会いたい/あなたとあたしはいったい何処へ向かう途中だったんだろ」って歌詞を聴いた時、本当に衝撃だった。タイムマシーンって、過去に戻るもので、何かをやり直したりするのが定番の使い方だと思ってたんだけど、もう1ッコのふたりを見に行くんだ、と思って。でもそもそも多分、この曲の主人公は、時を戻しても上手くいくなんて思ってないよな、と思って、すごく切なかった。この後「いつまでも終わらないような夏休みみたいな夕立だね」なんて続くんだ。終わってほしくない気持ちを「夏休み」に例えるなんて、クラクラしてしまう。「終わらない夏休み」も「タイムマシーン」も、ぜんぶ願望なんだ、叶うわけが絶対にない。なんて見事な歌詞だろう、と思った。
そんな川本真琴がビッグバンドを組んで、しかもTHE NOVEMBERSと対バンなんていうから、観る前からもう、すごく楽しみだった。
THE NOVEMBERSのボーカルの小林祐介は、川本真琴のファンだったらしくて「あのとき助けられた亀です、みたいな気持ちだ」って言って笑いを取っていたけど、すごくわかる、と思った。川本真琴はぼくが聴き始めた時には活動縮小していて、過去の人、みたいになってたから、まさかこの歳になってライブで観られるなんて思ってなかったんだ。
「タイムマシーン」はやらなかったけど、同じくらい好きだった「やきそばパン」をアンコールの最後にやってくれて、めちゃめちゃ嬉しかった。いちばんのヒット曲の「1/2」はとても落ち着いたアレンジになっていて、それも良かった。またライブやってくれないかな。CDも出たら買う。
そうそう、スカートの澤部さんがシークレットゲストで出てきたけど、デカすぎて笑った。
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こないだ行ったタイ料理屋さんで、店員さんが席を片付ける時に、空のビール瓶をポケットにしまうのを見た。自然にやってたから、きっといつもそうやってるんだろうと思って、それが良かった。日々の仕事の積み重ねから自然に生まれた習慣が垣間見えて、人の営みだな〜って思った。文化も歴史も芸術も。飲食店員の小さな習慣だって、人の営みの積み重ねだ。そういうものが愛おしいと思った。
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好きなことも嫌いなこともそんなにないけどやってみたいことは沢山ある気がしてる、必要なのはお金と元気。明日が来るのが楽しみだな〜、そんな毎日をおくりたい。絶対無理だ、って10年前の自分は思うと思うけど、今もそこそこかなり、そう思うけど、でも絶対ではないと思えるようになったんだよな〜。
地平の果てまで
さよなら。さようなら。左様なら。そうならねばならぬのら、別れましょう。この国の別れ際の言葉は、冷たい覚悟と共にある。この言葉を想う時、二度と会わないだろうと思われるひとのことを思い出して、意識が天国へ逝きかける。その全てが、左様ならば、というものだったと思う。ああ、あらゆるものは水が高きから低きへ落ちるが如く、自然に、収まりのよいところへ収まるものなのだなあ。悲しい。悲しい悲しい悲しい。おれが大事に思った誰かにとっておれは大事じゃなかったり、おれを大事に思う人のことをおれは大事じゃなかったりする。自然だ。水は燃やさないし火は凍らせない。自然だ。誰かが誰かであることを許すのなら、おれがおれであることが無くならないのなら、この惑星に空気はあるし、あなたに体温があるし、なのにこの感情はどこにもない。おれだけが知っている。どこにもないのに。そうか。おれしか知らないものが、この世には多すぎる。